烏苓通気散(うれいつうきさん)


烏苓通気散(うれいつうきさん)の効能

体力にかかわらず、広く使用されます。下腹部の痛みや乳腺の痛みに応用されます。


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適応される症状

  • 下腹部の痛み
  • 乳腺の痛み

配合生薬

配合生薬の効能

烏薬(うやく)

烏薬には芳香性健胃作用、鎮痛作用腸管蠕動運動促進などがあります。漢方では、下腹部の痛みや下痢などを目標に処方されています。

烏薬には、芳香成分のボルネオール、リンデレン、リンデラン、イソリンデレン、リンデロール、リンデストレンなどが含まれています。

民間療法として関節リウマチや打撲の患部などに貼って、外用に利用されていました。

当帰(とうき)

婦人病の妙薬として、漢方でひんぱんに処方される重要生薬の一つです。漢方では古来、駆お血(血流停滞の改善)、強壮、鎮痛、鎮静薬として、貧血、腰痛、身体疼痛、生理痛生理不順、その他更年期障害に適用されています。

茎葉の乾燥品は、ひびやしもやけ、肌荒れなどに薬湯料として利用されています。鎮静作用はリグスチライド、ブチリデンフタライド、セダン酸ラクトン、サフロールなどの精油成分によります。また有効成分アセチレン系のファルカリンジオールに鎮痛作用があります。

駆お血効果を裏付ける成分として、血液凝固阻害作用を示すアデノシンが豊富に含まれています。また、アラビノガラクタンなどの多糖体に免疫活性作用や抗腫瘍作用が認められ、抗ガン剤としての期待も、もたれています。

芍薬(しゃくやく)

芍薬は漢方処方で最もよく配合される生薬の一つで、主として筋肉の硬直、腹痛、腹部膨満感、頭痛、血滞などに広く処方されています。

主成分のモノテルペン配糖体ペオニフロリンには鎮痛、鎮静作用の他、末梢血管拡張、血流増加促進作用、抗アレルギー、ストレス性潰瘍の抑制、記憶学習障害改善、血小板凝集抑制などの作用が有ります。その他、非糖体ペオニフロリゲノンには筋弛緩作用が認められています。

香附子(こうぶし)

香附子は主に生理痛、生理不順に効果があります。これは有効ン成分セスキテルペニイド、ことにαーシペロンの鎮痛作用、子宮弛緩作用によります。

また、慢性胃炎、十二指腸潰瘍、神経性胃炎などにも広く利用されますが、やはりαーシペロンに炎症物質のプロズダグランジン生合成阻害作用があり抗炎症効果を現すためです。

山査子(さんざし)

山査子には、健胃作用 消化促進作用 止瀉作用 血管拡張作用 利尿作用がります。漢方では健胃、消化、整腸薬として消化不良、食欲不振、下痢などに用いられています。

山査子にはフラボノイドのクエルセチン、トリテルペノイドのオレアノール酸、ビタミンB1、C、黄赤色の色素カロチン、それに消化酵素のプロテアーゼなどを含みます。クエルセチンとオレアノール酸は利尿作用があります。

民間療法としては単独でも使い、健胃や整腸、二日酔い、食中毒に山査子を煎じて飲みます。

陳皮(ちんぴ)

陳皮はミカンの皮を、天日乾燥させた物です。リモネン、テルピネオールといった芳香性のある精油成分を豊富に含んでいるため、胃液分泌促進作用、胃運動亢進作用や抗炎症、抗アレルギー作用があります。漢方では、芳香性健胃薬や駆風(腸管にたまったガスを排出)、食欲増進、吐き気止めなどを目標に処方されます。

また、精油成分には一般に発汗作用があり、初期の風邪などに効果があります。入浴剤として利用すると血行をよくし、肌を滑らかにします。

茯苓(ぶくりょう)

茯苓には、利尿、強心、鎮痛、鎮静作用があります。漢方処方では利尿剤、利水剤、心悸亢進、胃内停水、浮腫、筋肉の痙攣などに茯苓を配合しています。

秩苓とは漢名で、植物名をマツホドと呼び、松の根に寄生するサルノコシカケ科の菌核です。秩苓は菌核に多糖類のβパヒマンを、それにテルペノイドやエルゴステロールなどの成分を含んでいます。

最近の報告では多糖類のパヒマンから誘導されたパヒマランに、細胞性免疫賦活作用が認められています。サルノコシカケ科に共通の抗腫瘍作用とともに、今後の研究が期待されています。

茯苓は民間薬としては使われず、まれに利尿を目的に煎液を飲む程度です。漢方でも配合薬としては汎用されますが、単独では用いません。

白朮(びゃくじゅつ)

朮は体内の水分代謝を正常に保つ作用があり、健胃利尿剤として利用されています。特に胃弱体質の人の下痢によく効き、胃アトニーや慢性胃腸病で、腹が張るとか、冷えによる腹痛を起こした場合などにもいいです。

日本では調製法の違いによって白朮(びゃくじゅつ)と蒼朮(そうじゅつ)に分けられます。いずれも同じような効能を示しますが、蒼朮は胃に力のある人の胃腸薬として使い分けられています。

両者の主成分は、精油成分のアトラクチロンと、アトラクチロジンです。ちなみに、白朮には止汗作用があるのに対して、蒼朮は発汗作用を示します。朮は漢方治療では、多くの処方に広く利用される生薬の一つです。

檳榔子(びんろうじ)

檳榔子は健胃、消化、収斂(組織を引き締め、収縮させ、結束させる作用)、および駆虫薬として、消化不良、下痢、腹痛および条虫駆除に利用されています。

主成分であるアレコリン、アレカイジンなどのアルカロイドがコリン作動性(神経関係)に働いて、各種平滑筋の収縮、発汗、腺分泌充進作用を示しますが、これらの薬理作用はサイクリックGMP(環状グアノシン一リン酸)の上昇効果によると説明されています。

アレコリンはまた、動物実験で学習および記憶能力の増進作用がみられ、痴呆症の改善効果が期待されています。

タンニン成分のアレカタンニンなどに、抗虫歯菌作用が認められています。また、未熟種子の乾燥品煎液を、家畜などの条虫駆除剤とする他、ミミズやヒルの殺虫剤としても利用されています。

延胡索(えんごさく)

延胡索には、鎮痛、鎮痙作用、抗潰瘍作用、胃液分泌抑制作用などがあります。漢方では、鎮痛、生理痛、関節痛、腹痛、駆お血(血の流れの改善)などを目的に処方されます。

延胡索の原植物はケシ科の植物ですから、アルカロイドを多く含んでおり、その主なものはコリダリン、テトラヒドロパルマチン、デヒドロコリダリン、コプティシン、テトラヒドロコプティシン、プロトピン、グラウシン、コロンバミンなどです。

このうち、テトラヒドロパルマチンには鎮痛作用があり、デヒドロコリダリンには抗潰瘍作用があります。

北海道に自生するエゾエンゴサクは、アイヌ民族のひとがその球根を「トマ」と呼んで、食料としていました。漢薬の「延胡索」はすべて中国や韓国からの輸入品で、日本産のものは市販されていません。

沢瀉(たくしゃ)

沢瀉には尿毒症の改善、肝脂肪の蓄積抑制、利尿作用などが認められています。

これらにはトリテルペンのアリソールB、およびそれらのモノアセタートが関与しています。また、これらは血中のコレステロール低下作用を示すことが動物実験で確認されています。また免疫活性作用は含有多糖類による効果です。

漢方では利尿薬や尿路疾患用薬、鎮暈薬(ちんうんやく:乗物酔い防止薬)などに処方されます。

木香(もっこう)

木香には、芳香性健胃、整腸、利尿、抗菌などの作用があります。漢方では、食欲不振や消化不良、婦人薬、精神神経などの薬に処方されます。

有効成分は、コスツノリド、デヒドロコスツスラクトンなどです。

コスツノリドとデヒドロコスツスラクトンには、アルコール吸収抑制作用や胃粘膜障害の抑制作用、胃排出能抑制作用、胆汁分泌促進作用などがあります。

甘草(かんぞう)

甘草は漢方治療で緩和、解毒を目的として、いろいろな症状に応用されますが、主として去痰、鎮咳、鎮痛、鎮痙、消炎などです。

有効成分のグリチルリチンには、痰を薄めて排除する作用があり、体内で分解するとグリチルレチン酸となって咳を止めます。

その他、グリチルリチンには多種多様の薬理効果が有り、消炎、抗潰瘍、抗アレルギー作用の他、免疫活性や、肝細胞膜の安定化、肝保護作用、肝障害抑制作用などが明らかにされています。

有効成分イソリクイリチンおよびイソリクイリチゲニンは糖尿病合併症の眼病治療薬として、また胃酸分泌抑制作用もあり胃潰瘍の治療薬として期待されています。

甘草はあまり長期服用しますと、低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、体重増加などの副作用が現れることがあるので、注意を要します。

生姜(しょうきょう)

生姜は優れた殺菌作用と健胃効果、血液循環の改善効果、発汗と解熱効果があります。漢方では芳香性健胃、矯味矯臭、食欲増進剤の他、解熱鎮痛薬、風邪薬、鎮吐薬として利用されています。

辛味成分のショウガオールやジンゲロールなどに解熱鎮痛作用、中枢神経系を介する胃運動抑制作用、腸蠕動運動充進作用などが有ります。そう他、炎症や痛みの原因物資プロスタグランジンの生合成阻害作用などが認められています。


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漢方薬の使用上の注意


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