滋陰降火湯(じいんこうかとう)


滋陰降火湯(じいんこうかとう)の効能

体力の低下した人で、のどに潤いがなくなって痰が出なくなって、激しく咳き込んだりする者に用います。急性・慢性の気管支炎、肺結核、乾性肋膜炎(かんせいろくまくえん)などに応用します。


スポンサードリンク


適応される症状

配合生薬

配合生薬の効能

当帰(とうき)

婦人病の妙薬として、漢方でひんぱんに処方される重要生薬の一つです。漢方では古来、駆お血(血流停滞の改善)、強壮、鎮痛、鎮静薬として、貧血、腰痛、身体疼痛、生理痛生理不順、その他更年期障害に適用されています。

茎葉の乾燥品は、ひびやしもやけ、肌荒れなどに薬湯料として利用されています。鎮静作用はリグスチライド、ブチリデンフタライド、セダン酸ラクトン、サフロールなどの精油成分によります。また有効成分アセチレン系のファルカリンジオールに鎮痛作用があります。

駆お血効果を裏付ける成分として、血液凝固阻害作用を示すアデノシンが豊富に含まれています。また、アラビノガラクタンなどの多糖体に免疫活性作用や抗腫瘍作用が認められ、抗ガン剤としての期待も、もたれています。

芍薬(しゃくやく)

芍薬は漢方処方で最もよく配合される生薬の一つで、主として筋肉の硬直、腹痛、腹部膨満感、頭痛、血滞などに広く処方されています。

主成分のモノテルペン配糖体ペオニフロリンには鎮痛、鎮静作用の他、末梢血管拡張、血流増加促進作用、抗アレルギー、ストレス性潰瘍の抑制、記憶学習障害改善、血小板凝集抑制などの作用が有ります。その他、非糖体ペオニフロリゲノンには筋弛緩作用が認められています。

地黄(じおう)

地黄は漢方治療で、糖尿病に用いられる処方の一つ八味地黄丸(はちみじおうがん)の主構成生薬です。地黄にはその調製法により鮮地黄(せんじおう)、乾地黄(かんじおう)、熟地黄(じゆくじおう)があります。

乾地黄には熱を冷ます作用と血糖降下作用がありますが、虚弱体質の方には不向きです。乾地黄の血糖降下作用はイリドイド配糖体のレーマンノサイド類によるものです、その他、乾地黄エキスには血圧を下げる作用が認められています。

鮮地黄には止血や通経作用があり、熟地黄エキスには血液増加作用や強壮効果があります。

天門冬(てんもんどう)

天門冬は漢方で鎮咳、利尿、強壮などの目的に使用されます。

この生薬には澱粉や粘液質のほかアスパラギン、ベータ・シトステロールなどを含みます。粘液質の成分は口腔内や消化管粘膜面の消炎保護作用があり、吸収されて滋養、止渇の効果があります。

民間療法では、天門冬の蜂蜜漬を強壮の目的や咳止めに使います。また煎じたエキスには利尿効果があるので、むくみの解消につながるそうです。

麦門冬(ばくもんどう)

麦門冬には鎮咳・抗炎症、抗腫瘍効果が認められています。これらの作用は主成分のステロイドサポニン、オフィオポゴニンによるものです。また、オフィオポゴニンDはIgM抗体の産生を抑制しますので、抗アレルギー作用を有しています。

漢方では、麦門冬は鎮咳去痰薬として処方されます。

陳皮(ちんぴ)

陳皮はミカンの皮を、天日乾燥させた物です。リモネン、テルピネオールといった芳香性のある精油成分を豊富に含んでいるため、胃液分泌促進作用、胃運動亢進作用や抗炎症、抗アレルギー作用があります。漢方では、芳香性健胃薬や駆風(腸管にたまったガスを排出)、食欲増進、吐き気止めなどを目標に処方されます。

また、精油成分には一般に発汗作用があり、初期の風邪などに効果があります。入浴剤として利用すると血行をよくし、肌を滑らかにします。

蒼朮(そうじゅつ)

朮は体内の水分代謝を正常に保つ作用があり、健胃利尿剤として利用されています。特に胃弱体質の人の下痢によく効き、胃アトニーや慢性胃腸病で、腹が張るとか、冷えによる腹痛を起こした場合などにもいいです。

日本では調製法の違いによって白朮(びゃくじゅつ)と蒼朮(そうじゅつ)に分けられます。いずれも同じような効能を示しますが、蒼朮は胃に力のある人の胃腸薬として使い分けられています。

両者の主成分は、精油成分のアトラクチロンと、アトラクチロジンです。ちなみに、白朮には止汗作用があるのに対して、蒼朮は発汗作用を示します。朮は漢方治療では、多くの処方に広く利用される生薬の一つです。

知母(ちも)

知母は解熱、消炎、利尿薬として用いられる他、糖尿病治療薬としても効果があります。

サポニン成分チモサポニン類に血糖降下作用が認められています。水性エキスには、消化性潰瘍形成抑制作用やホスホジエステラーゼ阻害活性(中性脂肪の分解を促進するサイクリックAMPを増やす作用)があります。

その他の成分として、キサントン配糖体のマンギフェリンや、ニコチン酸、パントテン酸などを含みます。

黄柏(おうばく)

黄柏は苦味健胃薬、整腸薬として、胃腸炎、腹痛、下痢に応用される他、打撲傷や神経痛に外用されます。

これらの効果は、黄柏の有効成分のベルベリンが大腸菌、チフス菌、コレラ菌に対して殺菌性を、黄色ブドウ球菌、淋菌、赤痢菌などに対して強い抗菌作用が有る他、抗炎症作用が有ることによります。

また、黄柏は黄疸にも用いられますが、煎汁やアルコールエキスに胆汁分泌促進作用が確認されています。

甘草(かんぞう)

甘草は漢方治療で緩和、解毒を目的として、いろいろな症状に応用されますが、主として去痰、鎮咳、鎮痛、鎮痙、消炎などです。

有効成分のグリチルリチンには、痰を薄めて排除する作用があり、体内で分解するとグリチルレチン酸となって咳を止めます。

その他、グリチルリチンには多種多様の薬理効果が有り、消炎、抗潰瘍、抗アレルギー作用の他、免疫活性や、肝細胞膜の安定化、肝保護作用、肝障害抑制作用などが明らかにされています。

有効成分イソリクイリチンおよびイソリクイリチゲニンは糖尿病合併症の眼病治療薬として、また胃酸分泌抑制作用もあり胃潰瘍の治療薬として期待されています。

甘草はあまり長期服用しますと、低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、体重増加などの副作用が現れることがあるので、注意を要します。


スポンサードリンク


漢方薬の使用上の注意


スポンサードリンク


↑ トップページ