柴陥湯(さいかんとう)


柴陥湯(さいかんとう)の効能

体力が中等度以上の人で、胸が痛く、咳が強く、痰がきれにくくて咳をするたびに胸が痛み、水おちから両脇にかけて硬く、押すと痛むような場合に用います。昔から乾性肋膜炎(かんせいろくまくえん)に、必ず用いられていました。


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適応される症状

配合生薬

配合生薬の効能

柴胡(さいこ)

柴胡は漢方治療で解熱、消炎、鎮静、鎮痛薬として多用される重要生薬の一つです。主成分としてサイコサポニンA~Fなどのサポニンを豊富に含み、動物実験で上記薬効を裏付ける多くのデータが報告されている他、臨床的に肝機能障害の改善作用が認められています。

漢方では主として胸脇苦満、風邪、咽頭の痛み、気管支炎、肺炎などで炎症熱のあるもの抗炎症などを目標に慢性肝炎、慢性腎炎などに処方されます。

一時柴胡を配合した漢方薬が、一部の肝機能障害患者で副作用と思われる症状を示し、問題になつたことがありますので、他の医薬品と併用する場合は医師とよく相談してください。

半夏(はんげ)

半夏には水分の停滞や代謝障害の改善作用や、鎮吐効果(吐き気止め)があります。特に胸腹部に突き上げるような膨満感があり、お腹がゴロゴロなる場合やのどの痛みがある場合に用います。

しかし、えぐみが強く、飲みにくくてかえって吐き気を催すこともあるので、単独で利用されることはまれで、漢方では吐き気をともなう胃腸障害や、つわりの適用処方などに広く配合される重要生薬の一つです。

鎮吐作用は、有効成分のアラビナンを主体とする多糖体成分によると考えられています。

黄ごん(おうごん)

漢方の中でも最もよく利用されるものの一つで、主に炎症や胃部のつかえ、下痢、嘔吐などを目的に使用されています。

黄ごんエキスは、炎症に関与する諸酵素に対して阻害作用を示しています。これらの作用は、この生薬中に豊富に含まれるフボノイドによるもので、特に有効成分バイカリンやバイカレイン、およびその配糖体はプロスタグランジンらの生合成やロイコトリエン類などの炎症物質の産生を阻害します。

その他、抗アレルギー(ケミカルメジエーターの遊離抑制)、活性酸素除去、過酸化脂質形成抑制、トランスアミナーゼの上昇抑制による肝障害予防、および胆汁排泄促進による利胆作用などが確認されています。

また、ヒト肝ガン由来培養肝がん細胞の増殖を抑制する他、メラノーマの培養細胞の増殖を抑制することより抗腫瘍効果が期待されています。漢方で多くの処方に配合されていますが、単独で用いられることはありません。

生姜(しょうきょう)

生姜は優れた殺菌作用と健胃効果、血液循環の改善効果、発汗と解熱効果があります。漢方では芳香性健胃、矯味矯臭、食欲増進剤の他、解熱鎮痛薬、風邪薬、鎮吐薬として利用されています。

辛味成分のショウガオールやジンゲロールなどに解熱鎮痛作用、中枢神経系を介する胃運動抑制作用、腸蠕動運動充進作用などが有ります。そう他、炎症や痛みの原因物資プロスタグランジンの生合成阻害作用などが認められています。

大棗(たいそう)

大棗は滋養強壮、健胃消化、鎮痛鎮痙、精神神経用薬として、多くの漢方処方に配合されています。

含有サポニンのジジフスサポニンによる抗ストレス作用があり、アルカロイド成分リシカミンのおよびノルヌシフェリンなどによる睡眠延長作用、多糖体ジジフスアラビナンによる免疫活性などが報告されています。

その他、サイクリックAMP(環状アデノシン一リン酸)があります、サイクリックAMPは脂肪組織を構成する中性脂肪の分解を促します。また、含有成分フルクトピラノサイドには抗アレルギー作用が認められています。

括括楼仁(かろにん)

植物のキカラスウリの根が括楼根(かろこん)、種子が括楼仁(かろにん)です。

括楼根は抗消化性潰瘍効果やインターフェロン(ウイルスに対抗する作用をもつタンパク質)誘起作用が確認され、解熱、抗炎症、鎮咳、止渇、催乳薬として利用されています。有効成分は脂肪酸のトリコサン酸やトリテルペノイドです。

括楼根はでんぷんを豊富に含み、「天花粉」と称して、昔から解熱消炎剤として小児の皮膚病やあせもなどに外用されていました。

括楼仁にも括楼根同様の脂肪酸や、トリテルペノイドが含まれ、抗腫瘍、免疫活性作用、アルコール代謝促進作用などが認められる他、抗ガン作用も報告されています。

甘草(かんぞう)

甘草は漢方治療で緩和、解毒を目的として、いろいろな症状に応用されますが、主として去痰、鎮咳、鎮痛、鎮痙、消炎などです。

有効成分のグリチルリチンには、痰を薄めて排除する作用があり、体内で分解するとグリチルレチン酸となって咳を止めます。

その他、グリチルリチンには多種多様の薬理効果が有り、消炎、抗潰瘍、抗アレルギー作用の他、免疫活性や、肝細胞膜の安定化、肝保護作用、肝障害抑制作用などが明らかにされています。

有効成分イソリクイリチンおよびイソリクイリチゲニンは糖尿病合併症の眼病治療薬として、また胃酸分泌抑制作用もあり胃潰瘍の治療薬として期待されています。

甘草はあまり長期服用しますと、低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、体重増加などの副作用が現れることがあるので、注意を要します。

黄連(おうれん)

苦味健胃薬として、よく利用される重要な生薬の一つです。漢方では精神不安や胸のつかえ、腹部疼痛、下痢、嘔吐を目的に使用されます。

成分としては、アルカロイドが主体で、コプチジンやオウレニン、ベルベリン、パルマチンなどです。

ベルベリンは大腸菌、チフス菌、コレラ菌に対して殺菌作用を、黄色ブドウ球菌、淋菌、赤痢菌などに対して広範囲な抗菌作用を示すほか、抗炎症作用および肝障害改善作用をも示します。抗炎症作用はコプチジンにもみられます。

その他、熱水抽出エキスには、消化酵素の活性化、高コレステロール症状の改善、免疫細胞のマクロファージを活性化して免疫力を強化する作用、鎮静作用など多くの作用が報告されています。

人参(にんじん)

漢方治療において最も繁用される有名生薬の一つで、古くから高貴な万能薬としてよく知られています。漢方では強壮や胃腸衰弱、消化不良、嘔吐、下痢、食欲不振などの改善を目標に幅広く処方されます。

この生薬の特異成分であるダマラン系サポニン(主としてギンセノシドRb、Rg群)は動物実験で、強制運動に対する疲労防止、および疲労回復、抗ストレス作用、ストレス潰瘍防止、免疫活性およびアンチエイジングなどを示し、各種機能の低下を抑制する作用が認められています。

その他、抗炎症、抗悪性腫瘍、肝機能改善作用、血糖降下作用、血中コレステロールおよび中性脂肪の低下作用なども確認されています。また、記憶障害改善(抗痴呆)効果が示唆されています。


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漢方薬の使用上の注意


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