葛根湯(かっこんとう)


葛根湯(かっこんとう)の効能

体力が中等度以上の人で、風邪症状があり、頭痛、発熱、悪感があって首や肩のこり、鼻づまり、汗の出ない人によく用います。代表的風邪薬ですが、その他の熱性疾患、上半身、特に首から上の炎症性疾患や熱症状がない、肩こりにも用います。


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葛根湯(かっこんとう)の解説

葛根湯(かっこんとう)の風邪に対する効果

漢方薬にも西洋医薬にも風邪の治療薬がありますが、一体どちらが効くか、北海道の本間行彦医師が風邪 に対する漢方薬と西洋医薬の比較検証を行いました。

初診時に37度以上の発熱がある患者にそれぞれ、漢方薬35名と西洋医薬の解熱鎮痛消炎剤45名に投 与したところ、熱が下がるまでの時間は現代医薬群が2.6日、漢方薬群が1.5日でした。漢方薬をのほ うが、早く熱が下がる事がわかりました。

さらに、熱の再発も漢方薬が0%だったのに対して、西洋医薬は11%でした。出雲市の阿部勝利医師は 、初診患者を漢方薬と西洋医薬に交互に振り分けて調べたところ(漢方薬386名、西洋医薬397名)、冬 のインフルエンザでは漢方薬のほうが重症化は少ないという報告を、学会で発表しています。風邪に関して は漢方薬のほうが西洋医薬より優れているという科学的な裏付けの一つです。

では、なぜ漢方薬のほうが優れているのでしょうか、風邪と薬の関係を考えてみましょう。私たちが風邪 と言っている病気は医学的には「感冒」(かんぼう)と呼ばれ、様々な細菌やウイルスが原因となって起こ ります。

一方インフルエンザ(流行性感冒)は全てウイルスが原因ですが、こちらも様々なタイプのウイルスが存在 します。風邪もインフルエンザも、感染して体内で病原体が増殖して様々な症状を引き起こすわけですが、 病原体が体内にいる限り治りません。

そして体内に侵入した病原体を殺菌薬は、実は漢方薬にも西洋医薬にもありません。西洋医薬は発熱、痛 み、炎症など風邪の個々の症状を和らげるために使われます。一方漢方薬は、体が本来持つ免疫力を活性化 するために服用します。その免疫力は、「発熱」として発揮されます。

風邪を引いて熱が出るのは、体の免疫力が風邪の病原体と戦っていることの証です。高齢者が、風邪が原 因で亡くなるのは、この免疫力が失われているからに他なりません。風邪を引いたら、栄養を取って温かく してじっと寝ているのは、熱で病原体を殺菌するためです。それには通常、数日かかります。西洋医学で風 邪に対して解熱剤を投与するのは、病原体と戦う免疫力の足を引っ張ることになるわけですから、この点で 矛盾しています。

熱の再発が西洋医薬の場合11%あったということは、無理やり熱を下げた結果、体内に残っていた病原 体が再び活性化して、免疫力がそれと戦い始めた証拠です。つまり、病気を長引かせる結果になったのです 。

漢方薬は効率よく発熱させて、早く治癒させようとする薬ですから、西洋医薬より約1日、解熱の時間が 短いのです。ただし、風邪という病気は、体の中の病原体を殺菌しても、丈夫な人でも約1週間はいろいろ な症状が残ります。

大切なのは引かないように予防すること、そして引きはじめを早く察知して、その時点で食い止めること です。風邪の引き始めなら、数時間以内で病原体を体外へ押し出す漢方薬があります。漢方薬は体質や体力 で選択しなくてはならない、とよく言われますが、風邪の場合もこれは当てはまります。体質とか体力は、 体が自然に備えている免疫力のスタイルのようなものですから、人によってそれぞれ異なります。

また西洋医学の薬には病原菌の耐性という問題が起こりますが、漢方薬は本来の思想が異なりますから、 その心配は全くありません。

選択できる「桂枝湯」(けいしとう)「葛根湯」(かっこんとう)「麻黄湯」(まおうとう)

漢方では体質、体力を「虚」つとか「実」という言葉で表しますが、虚証に用いられるのが「桂枝湯」( けいしとう)、実証に用いられるのが「麻黄湯」(まおうとう)、虚実間に用いられるのが「葛根湯」(か っこんとう)です。漢方医なら患者の腹部や脈や舌を診てどの証かを決めますが、一般人にはなかなかでき ません。そこで、次のポイントを選択の基準にしてください。それは、わきの下の状態です。

風邪の引きはじめに、寒気がして熱っぽく、わきの下にじんわりと汗をかいているようなら迷わず桂枝湯 の証です。漢方では「表寒虚証」(ひょうかんきょしょう)といって、比較的に体力が低下しており、脈が 一般に弱い状態の患者さんに処方されます。

反対にわきの下が汗ばんでいなくて、サラッとした状態なら葛根湯を選びましょう。比較的に体力があっ て背中にこわばりのある、「表寒虚実中間証」に処方される薬です。もっと体力があって自然発汗がない場 合、つまり「表寒実証」(ひょうかんじっしょう)の患者さんには麻黄湯が処方されます。

麻黄湯と葛根湯の差は、一般の方では見分けがつきにくいと思いますので、まず葛根湯で試されるのがい いと思います。ポイントになるのは、わきの下の状態です。

この体質・体力は同じ人が虚になったり実になったりと加齢や過労が原因でまれに変わることもあります が、基本的には変動することはほとんどありません。ですから、一度漢方医に症を診てもらうのもいいかも しれません。

適応される症状

配合生薬

配合生薬の効能

葛根(かっこん)

クズから作られる葛根は解熱、発汗、鎮痙薬として、風邪の初期に他の生薬と配合してよく利用されます(葛根湯)。有効成分はダイツジン、ダイツゼイン、プエラリンなどです。鎮痙作用は、ダイツゼインによるものです。

ただし、漢方でいう虚症タイプ(汗かきで、体が弱く、胃弱)の人はかえって気分を悪くするので葛根含有処方は用いない方が良いです。

民間療法のクズ湯は、寒気や熱を去り、喉の渇きにもいいです。

麻黄(まおう)

麻黄は発汗、解熱、鎮咳、鎮痛作用があり、喘息や呼吸困難、悪寒、関節痛に有効で、漢方では、風邪の初期に頻用される葛根湯(かっこんとう)などに配合されます。

主成分のエフェドリンは気管支筋弛緩作用を有する他、アドレナリンに似た交感神経興奮作用を示し、散瞳、発汗、血圧上昇効果などをあらわします。

また、麻黄エキスおよびエフェドリンは体温を上昇させ、発汗を促して熱を放出させることにより解熱効果をあらわす他、抗炎症作用も認められています。

また、多糖体であるエフェドランA-Eを含有し、血糖降下作用を示します。また麻黄の根には、地上部と逆に血圧降下作用を示す他、止汗作用があります。

生姜(しょうきょう)

生姜は優れた殺菌作用と健胃効果、血液循環の改善効果、発汗と解熱効果があります。漢方では芳香性健胃、矯味矯臭、食欲増進剤の他、解熱鎮痛薬、風邪薬、鎮吐薬として利用されています。

辛味成分のショウガオールやジンゲロールなどに解熱鎮痛作用、中枢神経系を介する胃運動抑制作用、腸蠕動運動充進作用などが有ります。そう他、炎症や痛みの原因物資プロスタグランジンの生合成阻害作用などが認められています。

大棗(たいそう)

大棗は滋養強壮、健胃消化、鎮痛鎮痙、精神神経用薬として、多くの漢方処方に配合されています。

含有サポニンのジジフスサポニンによる抗ストレス作用があり、アルカロイド成分リシカミンのおよびノルヌシフェリンなどによる睡眠延長作用、多糖体ジジフスアラビナンによる免疫活性などが報告されています。

その他、サイクリックAMP(環状アデノシン一リン酸)があります、サイクリックAMPは脂肪組織を構成する中性脂肪の分解を促します。また、含有成分フルクトピラノサイドには抗アレルギー作用が認められています。

桂皮(けいひ)

桂皮には、発汗作用 健胃作用 のぼせを治す作用 鎮痛作用 解熱作用があります。漢方では、頭痛、発熱、悪風、体痛、逆上などを目的に使います。

主成分は、カツラアルデヒドを含む精油です。

風邪をひいて胃腸や体が丈夫でない人は葛根湯(かっこんとう)でなく、桂皮を配合した桂枝湯(けいしとう)を服用すると良いでしょう。

民間療法として桂皮は健胃、整腸に用いられ、桂皮を煎じて食前に飲みます。また桂皮の葉を陰干しにし布袋に詰めて風呂に入れると、精油の作用で体をあたためる効果があります。

芍薬(しゃくやく)

芍薬は漢方処方で最もよく配合される生薬の一つで、主として筋肉の硬直、腹痛、腹部膨満感、頭痛、血滞などに広く処方されています。

主成分のモノテルペン配糖体ペオニフロリンには鎮痛、鎮静作用の他、末梢血管拡張、血流増加促進作用、抗アレルギー、ストレス性潰瘍の抑制、記憶学習障害改善、血小板凝集抑制などの作用が有ります。その他、非糖体ペオニフロリゲノンには筋弛緩作用が認められています。

甘草(かんぞう)

甘草は漢方治療で緩和、解毒を目的として、いろいろな症状に応用されますが、主として去痰、鎮咳、鎮痛、鎮痙、消炎などです。

有効成分のグリチルリチンには、痰を薄めて排除する作用があり、体内で分解するとグリチルレチン酸となって咳を止めます。

その他、グリチルリチンには多種多様の薬理効果が有り、消炎、抗潰瘍、抗アレルギー作用の他、免疫活性や、肝細胞膜の安定化、肝保護作用、肝障害抑制作用などが明らかにされています。

有効成分イソリクイリチンおよびイソリクイリチゲニンは糖尿病合併症の眼病治療薬として、また胃酸分泌抑制作用もあり胃潰瘍の治療薬として期待されています。

甘草はあまり長期服用しますと、低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、体重増加などの副作用が現れることがあるので、注意を要します。


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漢方薬の使用上の注意


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